デイーゼルエンジン用冷却液の選択並びに使用は非常に複雑で、同じエンジンでも年式に依って異なる冷却液が推選されている場合もあります。 従って、必ずオーナーズマニュアルに従って冷却液を選択し、使用して下さい。 読むと納得して頂けると思います。
今回はデイーゼルエンジン用の冷却液が重要な理由を書いてみます。
デイーゼルエンジン用冷却液には色々の種類があり、選択も色々あり、更に間違った選択をしますとエンジン、ラジエーター、ウオーターポンプ等の寿命を短くして仕舞います。
デイーゼルエンジン用冷却液に関する事柄:
• キャビテーション
ガソリンエンジンと異なりデイーゼルエンジンにはキャビテーションと呼ばれる問題があります。 キャビテーションとは一般的に船のスクリューが水の中で空気を吸い込む事を言いますが、デイーゼルエンジンに関する場合は冷却水の低圧部分で極細の気泡が出来、この気泡がシリンダーに付着し、最終的に破裂をして付着表面を腐食させる事を意味します。 極細の気泡が破裂する際は非常に高い温度と圧力を発生する為にシリンダー壁を腐食し、長く続くと穴をも開けて仕舞います。
デイーゼルエンジンは圧縮比が高い為シリンダーウオールが振動を繰り返してキャビテーション問題が起り易く、特にシリンダーウオールが薄いデイーゼルエンジンやウエットスリーブと呼ばれる構造のデイーゼルエンジンには重大な問題です。
冷却システムに漏れが有ったり、冷却水が充分入っていない為にリカバリータンクから空気を吸い込む状態ですと冷却システムに空気が入ってキャビテーションを促進します。
• デイーゼル用不凍液の機能
本来、冷却液(不凍液)は凍結温度を下げる事と沸騰温度を上げるのが目的ですが、添加剤(SCA=Supplimental Coolant Additive、DCA=Diesel Coolant Additives)の作用で錆(酸化)、特にキャビテーションに依る腐食を防ぎます。
• 添加剤(SCA,DSA)
冷却液にはアルミの腐食を防ぐ為にケイ酸塩が含まれているものがあります。 ケイ酸塩はアルミの腐食を防ぐ有効な物質ですが、消耗しますので無くなった時点で補充をするか冷却水の交換をする必要があります(ケイ酸塩以外の腐食防止剤も遣われている)。
ケイ酸塩を含んでいない冷却液をデイーゼルエンジンに使用する場合は添加剤としてケイ酸塩が販売されています。 ケイ酸塩に比べて錆止めや腐食防止の添加剤は長期間有効です。
ケイ酸塩には問題があります。 入れ過ぎるとケイ酸(シリカ)が堆積してラジエーター、エンジン、ウオーターポンプ等の水路を詰らせて仕舞います。 又、付着した珪素塩の表面はザラザラな為にウオーターポンプのシール等を傷めて漏れの原因になります。 この為部品を長持ちさせる為にケイ酸塩が含まれていない冷却液も多く、ガソリンエンジン用の緑の冷却液には一般的にケイ酸塩が含まれていません。
アメリカと日本の冷却液では異なる様で、アメリカで販売されている日本車(ガソリン乗用車)に入って来る緑(ホンダ)や赤(トヨタ)にはケイ酸塩は入っていないとの事で、ケイ酸の問題を考えての事だと思われます。
デイーゼル用冷却液でケイ酸が含まれていない物もあります。
(写真の様なピンクの冷却液もありますが、ケイ酸塩の有無とは関係がありません)。
続きは次回にしますが、最終的にはデイーゼルエンジン用冷却液の選択の仕方を書きます。