ブレーキフルイッドの種類:
既に書きました様に、現在一般的に出回っているブレーキフルイッドにはDot 3、Dot4、Dot5、Dot5.1 の4種類があります。 これ等は2種類に分類され、Dot 3、Dot4、Dot5.1のグライコールベースと、Dot5のシリコンベースです(上左のチャート)。
沸騰温度:
ブレーキフルイッドの規格(FMVSS 116、 NHTSA 116、 SAE J1703-J1705、JIS K2233、 その他)には沸騰温度、粘度、酸性度、温度に対する耐久性、化学的耐久性、腐食性、その他の必要条件が定められていますが、その中でも最もよく目に付くのが沸騰温度で、ブレーキフルイッドは沸騰温度で優劣が付けられている感じを受けます。
参考1: グライコール ブレーキフルイッドは吸水性が高く、容器を開封しますと空気中の水分を吸収し始めます。 ドライ沸騰温度のドライとは容器から取り出した直後の水分が0%の状態を言い、ウエットは時間を経て吸水した状態を言い、ウエット沸騰温度のテストでは3.7%(重量)の状態で行います。
水は100℃(212℉)で沸騰しますので、フレーキフルイッドは吸水が増せば増すほど沸騰温度が下がります。 上左のチャートに示されて居ます様にDot3の沸騰温度はDot4より低いのですが、吸水性はDot4の方が高い性質を持っています。 その為、使い残しの長い時間が経過したDot4の沸騰点はDot3よりも低くなります。 従って使い残しの古いブレーキフルイッドは決して使わない事が大切で、メーカーに依っては大きな容器(32オンス、1リッター)では販売しない会社も在る位です。
ブレーキフルイッドのミックス:
既に書きました様に、ブレーキフルイッドには透明色又は薄い透明茶褐色のグライコールベースのDot 3、Dot4、Dot5.1と紫色又は赤紫色に着色されたシリコンベースのDot5が在りますが、チャート(上右)に示されて居ます様にグライコールベース間のミックスは問題在りません。 しかし、シリコンベースのDot5は他の何れのグライコールベースのブレーキフルイッドともミックスをする事は絶対に出来ません。
参考:
アメリカ国内で販売されるブレーキフルイッドはDot571.116の規格を満たす必要があり、パッケージに関しても詳細な条件が書かれており、その中にはDot5には〝Dot5 シリコンベース”、Dot5.1には〝Dot5.1 グライコールベース”と表示する様にも記載されています(参考:Designation of the contents as “DOT—MOTOR VEHICLE BRAKE FLUID” (Fill in DOT 3, DOT 4, DOT 5 SILICONE BASE, or DOT 5.1 NON-SILICONE BASE as applicable)。.
次のサイトに興味を引く記述が在ります。
http://www.keiyo-parts.co.jp/seiken.dot5.html
このブレーキフルイッドはDot5で在りながらグライコールベースと書かれています。 最初に容器(写真下)を見た際はDot5.1の印刷ミスか容器に記載されている5.1の〝.1”が見えないかとも思いましたが、上のサイトにハッキリとDot5でグライコールベースと書かれています。
メーカーに直接問い合わせれば簡単に解決する事なのですが、Dot5に関してはこの様な疑問を抱く事柄が沢山あります。 国に依っては、グライコールベースで沸騰温度の高いブレーキフルイッドがDot5(Dot5.1では無く)と表示されて売られたり、Dot6として売られて居る様で、アメリカのDot規格とは関連が無い場合も在る様です。
参考:
Dot5とDot5.1 には何らかの関係が在る様な感じを受けますが、両ブレーキフルイッドの間には何の関連もありません。 強いて共通性を上げれば両者の沸騰点が同じ事です。 尚、上に表示されています沸騰温度のチャート(上左)は規格から得たもので正確ですが、Dot5.1 の方が高く表示されているチャートも出回っていて、数値にも種類があります。
Dot番号(ブレーキフルイッド)の選択:
同じベースのブレーキフルイッドのミックス、即ちDot 3、Dot4、Dot5.1をミックスしても反応を起す様な事はありませんが、厳密にはマニュアルに示されたDot番号のブレーキフルイッドを使用するのが確実です。 Dot3使用の車にDot4を使用した場合にブレーキシステム部品、特にゴム部品に問題が生じる可能性は無きにしも在らずです。 しかし、一般的にはDot番号の低い方から高い方に変更する事には全く問題が無いとされています、即ち、Dot3からDot4に変更すれば少なくともDot3以上のパフォーマンスを期待出来ますが、Dot4からDot3に変更しますとDot4と同等のパフォーマンスは期待出来ないと言う事です。 更に、異なるブレーキフルイッドをミックスしますと沸騰温度は単一ブレーキフルイッドより下がります。
何れにしても、異なるブレーキフルイッド(グライコールベース間)のミックス以上に大切な事はブレーキフルイッドを定期的、即ち2-3年毎に新しい物と交換し、又使い残した古いブレーキフルイッドは再使用しない様にすれば、マスターシリンダー、キャリパー、アクチュエーター等の部品は酸化や腐食の影響を最小限に留める事が出来て、長い目で見れば経済的だと思われます。
疑問:
ブレーキフルイッドに関して調べていますと疑問点が沢山出て来ます、特にDot5に関しては果たしてどれが正しいのか驚きです。
シリコンベースのDot5は沸騰温度が高い上に、自然に優しく、毒性は無く、グライコールベースの様にペンキを溶かしたりする事も無くクラシックカーには最適で、アメリカ軍の全ての車両にはこのDot5が使われています。 しかし、Dot5の宣伝、例えばレーシングカー用などと書かれた説明を読んだだけで飛び付いたら大変な事になります。 又、〝Dot5はエンタイロックブレーキシステム(ABS)には使用するべきでは無い”は良く目にする記述です。
次回はシリコンベースのDot5に関連した事柄を説明します。