今回はトウド牽引を考えている人の為に、必要な装備、注意点、大よその装備価格、トウドに適した車、その他アメリカに於ける現状を書きます。
参考:
http://www.royrobinsonrv.com/images/pdf/DinghyGuide2013.pdf
A. トウドとは:
クラスAやクラスCのRVで牽引する乗用車やバギー等を言います。 この事に関しては以前書きましたので次のサイトを参考にして下さい。
http://www.net-camper.com/cgi-bin/rv-ken/diarypro/diary.cgi?no=286
http://www.net-camper.com/cgi-bin/rv-ken/diarypro/diary.cgi?no=151
大型RV(クラスAやDP)は小回りが効かず駐車スペースも中々無く、目的地に着いてからの移動が不便です。 駐車スペースに恵まれているアメリカでさえ、移動する為に電気や下水道のフックアップを外して動ける状態したり、観光地をアチコチ走り回るのは不便です。 又、移動中に故障、特にエンジンや駆動関係の故障が起きた場合にはトウドがあると部品調達等に役立ちます。 従って、アメリカでは殆どのクラスAがトウドを牽引しており、最近ではクラスCは勿論、クラスBでもトウドを牽引して居るのを見る事が有ります。 燃費低下はそれほど無く(10%以下?)で、運転の仕方(急加速や無理な登坂)、風の抵抗、速度の出し過ぎの方が影響が大きいと思います。 日本では牽引免許が必要かも知れませんが、アメリカでは殆どの州で合法的に乗用車の免許でクラスAは勿論、トウド牽引の運転も出来ます。
B. トウド牽引に必要な装備:
基本的なヒッチ、トウバー、ベースプレートの他に、幾つかの必需品があります。
1. ヒッチ ($100‐$300)
牽引車(クラスA、クラスC、トラック等)に取り付けられた牽引用の構造物を指し、この後部中央に通常2インチ(他のサイズもある)の四角い穴の開いた金属パイプが取り付けてあります。 この四角い金属パイプ部分をレシーバーと呼びますが、一般的にこの部分もヒッチと呼ばれています。 更にこの四角い金属パイプに差し込まれたヒッチボールの取り付けられた部品をボールマウント呼びますが、ヒッチボールも含めてヒッチと呼ばれるのが一般的です。
ヒッチ(構造物)には牽引強度に応じてクラスI(最大910Kg)、クラスII(最大1600Kg)、クラスIII(最大2300Kg)、クラスIV(最大4500Kg)、クラスV等がありますが、一般的なヒッチはクラスIIIが装備されていると考えた方が無難で、2300Kg以上の牽引をする場合は確認をする必要があります。
注意:
アメリカ製RV(クラスA、クラスC、トラック等)には車内にGVWR=Gross Vehicle Weight Rating(最大許容重量)とGross Combined Weight Rating=GCWRの表示が義務付けられており、この数値の差がトウドの最大重量となります。 従って、この数値より大きな牽引はヒッチを交換しても出来ません。
2. トウバー ($300‐$600)
牽引車(クラスA)と牽引される車(トウド)を繋げる通常三角形をした金属構造物を呼び、機能により数種類あります。 ヒッチに接続の仕方によりボールヒッチタイプと直接レシーバーに差し込むタイプがあります。 トウドを牽引しない場合も常にトウバーを牽引車の後部に固定(保管)するタイプはレシーバーに差し込むタイプが殆どですが、反対にトウバーをトウドに固定(牽引されない場合もトウバーを取り付けたまま)するタイプはボールヒッチタイプが多い様です。
トウバーと一緒に必用なのが牽引車とトウドを繋ぐ、両端に差し込みプラグが付いた電気ケーブルで、左右のブレーキライト、アース、その他、方向指示ライトやプラス電源等の4本から7本の線が入ったケーブルが必要です($50-$80)。
トレーラーに乗せたり、前輪を上げて牽引することに対して、トウドをそのまま牽引することをフォーダウン、フラットトウと呼びますが、フォーダウンのトウドを牽引車に接続する為には、トレーラーや前輪を上げる場合と異なり、牽引車とトウドが正確な位置関係に無いと接続が不可能です。 此れを解消する為に最近の多くのトウバーは左右のアームの長さが伸縮出来る様になって居ます。 旧型、又は簡単(安価)な伸縮機能の無いトウバーはトウド接続に時間を要します。
3. ベースプレート(トウイングブラケット)($350‐$500)
トウドの前部にトウバーを接続する構造物で、既存のボルトやナットを利用して最小限の穴あけや加工で取り付けが可能になっています。
ロードマスター社はトウイングブラケットと呼ぶ様ですが、ここでは一般的なベースプレートの名称を使います。
アメリカで販売されている車の多くは既製品のベースプレートを購入する事が出来ます。 ブルーオックス社とロードマスター社の2社が此れまで多数を製造しており、年式やモデルにより数百種類の異なる取り付け構造のベースプレートが製造されていると思われます。
http://www.rvcharts.com/sites/default/files/Blue%20Ox%202010%20Fit%20List.pdf
http://roadmasterinc.com/bg_/bg_rmi_std.pdf
4輪駆動車や軽量車がトウドとしてポピュラーですが、年月と共に重量や価格の変動、更には製造中止や牽引に適した新型モデル登場等で穏やかな変化が見られます。 最近はシボレーの小型乗用車が目に付きますが、過去にはPTクルーザー、スバルフォレスター、スズキジムニー、GMサターン、改造バギー等が多く見られました。 ホンダCRVは1995年に登場して以来トウドとして常に人気があります。 全ての年式やモデルではありませんが、リンカーン、キャデラック、ベンツ、BMW等のベースプレートも多数製造されていますので、現在これ等の車をお持ちの方で牽引を考えている方は牽引出来る可能性が大いにあります。
4. トウドのブレーキライト用配線 ($30-$50)
牽引中にトウドのブレーキライトや方向指示ライトの作動が必要で、トウドの配線に手を加える必要です。 最近の車は電子制御が使用されて居ますので、電流を逆流させるとエンジンコンピューター(ECM)の故障の原因にも成り兼ねませんので、電流逆流防止のダイオードを挿入してブレーキライトや指示ライトの配線をする必要があります。 高校の理科程度の知識で自分で配線が出来ますが、ダイオードが組み込まれた汎用型キットが安価で販売されていますし、年式やモデルに応じて差込みをするだけで、線を切ったり接続せずに使用出来るセットも販売されています。
5. 安全ケーブル ($50-$80)
何らかの理由で、トウドが牽引車から外れた場合に一人で走り去って行かない為の金属ケーブル、又はチェーンの使用が義務付けられています。
6. トウドブレーキ ($300-$1200)
牽引中のトウド用ブレーキ作動装置で、10社前後の会社が異なる装置を製造製造しています。 制動時の慣性力を利用したもの、電気、バキューム、コンプレッサー、DPの圧縮空気、金属線を利用した物等様々ですが、急ブレーキの場合だけに作動するタイプと常に牽引車と連携するタイプがあります。 連携するタイプは高価で、このタイプを絶賛するRVerは少なくありませんが、私は普段はトウドのブレーキが作動しないタイプを好みます。 理由は、通常時に小さなトウドのブレーキが作動しても大して影響は無く、滑り易い道路では速度を落とせば安全です。 又、牽引車の大きなブレーキパッドやシューは殆ど減りませんが、トウドのパッドやシューには相当の負担となります。 緊急時に作動すれば充分です。
アメリカ国内ではトウドブレーキを必要としない州もありますが、殆どの州でトウドブレーキの必要性が法律で定められていて、カナダも全州で必用とされています。 カナダのブリテイッシコロンビア州では取締りが厳しいと聞いていますが、他では強制はしてい無い様です。 しかし、問題は事故を起した時で、保険が出なくなる可能性も考えられます。
尚、トウドが外れた場合にトウドにブレーキが作動する装置も必要ですが、此れは誤作動を起してブレーキを焼き付けて仕舞ったりタイヤを駄目にした報告もある為に、個人の判断が必要です。
7. タイヤプレッシャーモニター ($400-$600)
一般にTPMSと呼ばれる装置で、各々のホイールに取り付けられたセンサーが空気圧(温度)を無線で牽引車に装備したモニターに表示します。
トウドの空気圧が下がっても運転席からは分かりません。 バーストの一番の原因は空気圧不足ですので、取り付けの必要はありませんがバースト回避に役立ちます。
C. 牽引可能な車
全ての車が牽引可能ではありません。
1. トウドに適した車
更に重要なのはトランスミッションの構造に依って牽引出来ない車が多数あります。 主にオートマチックトランスミッション付きですが、これ等の車を牽引しますとトランスミッションが焼き付いてしまいます。 一般的に、ホンダ(必用操作あり)、GM(シボレー、ポンテイアック、ビュイック、キャデラック)、ダッジのオートマチック車は牽引が可能ですが、その他の車の場合は一般的にマニュアル車でないと牽引が出来ません。 スバルフォーレスター(全てのスバル車)やトヨタラブ4等はマニュアル車だけが牽引可能です。 しかし、ラブ4の場合10年程前にマニュアルトランスミッションの廃止になり、牽引する為には特殊装備が必要になりました。
2. 全てのオートマチック車は牽引可能
オートマチック車が牽引出来ない場合の理由は牽引時にトランスミッションの潤滑油ポンプが作動しない為に焼付きを起こす為です。 此れを解決する会社がRemco社で、以前はこの問題を解決する改造部品や装備を専門的に販売していて、3種類の方法がありましたが、現在は電動潤滑ポンプと後輪駆動車用に駆動軸を外す装置の2種類を販売して居るようです。
http://www.ocalahitch.com/LubePumps.aspx
既に所有しているオートマチック車が牽引に適していない場合に、トウド(新車、中古車)に使用出来る車を購入するか、既存の車を使用するかの選択は人それぞれ異なりますが、長年使用した愛着や買い替え費用に対して、改造(装備)費用や牽引時の余分の操作や装備のメインテナンス等を考慮する必要があります(当たり前)。
次回はトウド牽引に関して、装備、注意点等、知っておきたい点を書く予定です。